Guitar Log Hut

30代2児のパパの日記です

とある施設で

今日は写真も何もありませんが、人生のアウトプットをするために書こうと思います。

エッセイみたいなものです。

 

 

 

 

あれからもう10年経った。

 

ちょうど今くらいの季節だった。

 

ある療養施設に数日訪問する機会があった。

 

ここではかつてハンセン氏病で隔離された人達が生活している。

 

人里離れた静かな場所。

 

集会所にはカワバルさん(仮名)という方がいた。

 

僕たちは何をするわけでもない。

 

一緒に世間話をして、お茶やお菓子をいただいて、時間が来たら帰る。

 

最初は遠慮をして

 

「そんなに気を遣わないでください。」

 

と言っていたが、それもやめて出されたものは物は「ありがとうございます。」と言って頂くことにした。

 

なぜかというと、頂かないでいるとものすごく悲しまれるからだった。

 

私たちの出したものを食べてくれないのか、私たちと一緒に時間を過ごしてくれないのか。

 

そう言い出しそうな悲しくも寂しい目をしているように見えた。

 

そしてそれだけのことをされてきたんだなと思った。

 

その施設の外に自ら出る事はない。

 

集会所には大体同じ人がいる。

 

年配者ばかり。

 

同じ人が同じ話をする。

 

僕たちは毎回初めて聞いたかのように話を聞いていた。

 

ある時ふと気付いた。

 

今来た人はカワバルさんをカワバルさんと呼んでいて、別の人はカワハラさんと呼んでいる。

 

カワバルさんはどちらにも同じように返事をしている。

 

「どっちなんですか?」

 

と聞いてみたら

 

「どっちでも良いんだよ。」

 

とカワバルさんは笑いながら答えた。

 

昔は本名を名乗ると家族に迷惑がかかるから、ここにいる人はみんな名前を変えたんだと教えてくれた。

 

カワバルさんはいつも帰りに手作りのサーターアンダギーを持たせてくれた。

 

何事も粗末にしてはいけない。

 

物も気持ちも。

 

人生の転換期を迎えているのか、ふとあの日々のことを思い出した。